2021年11月3日(水・祝)Veni, Sancte Spiritus ~来たれ、聖霊よ~ パイプオルガン、ソプラノ、舞踊による祈りの時
11月3日に行うリサイタルのお知らせです。
名古屋市民芸術祭2021参加公演
Veni, Sancte Spiritus ~来たれ、聖霊よ~
パイプオルガン、ソプラノ、舞踊による祈りの時
2021年11月3日(水・祝) 13:00開場 13:30開演
愛知県芸術劇場コンサートホール 入場料3000円
Program
グレゴリオ聖歌
Veni, Sancte Spiritus
Gregorian Chant, Veni Sancte Spiritus
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ (1685-1750)
「来たれ、聖霊よ」による幻想曲 BWV651
Johann Sebastian Bach, Fantasia Super: Komm, Heiliger Geist BWV 651
ニコラ・ド・グリニー (1672-1703)
賛歌「来たれ、創造主である聖霊」
Nicolas de Grigny, Veni creator
ビンゲンの聖ヒルデガルド (1098-1179)
聖霊の続唱 O ignis Spiritus Paraclitus
Hildegard von Bingen, Sequenz „O ignis Spiritus Paraclitus“
トーマス・マイヤー=フィービッヒ ( *1949)
聖ヒルデガルドの続唱によるトッカータ (2021、世界初演)
Thomas Meyer-Fiebig, Toccata über die Sequenz „De Spiritu Sancto“ der Hildegard von Bingen
ジャンヌ・デメッシュー (1921-1968、生誕100周年)
聖霊の7つの瞑想曲
テ・デウム
Jeanne Demessieux, Sept Méditations sur le Saint Esprit, Te Deum
Performers
吉田文(パイプオルガン)
加藤佳代子(ソプラノ、グレゴリオ聖歌・聖ヒルデガルドの聖歌)
倉知可英(舞踊)
倉知可英門下生(群舞)
委嘱作品作曲:トーマス・マイヤー=フィービッヒ
マネージメント:二宮音楽事務所
【企画について】
コロナ禍において、私たちは祈ることしかできない日々を知りました。
しかし人はこれまでも、顕在しなくとも心のどこかで感じられ、響き合える存在へ祈り続けてきました。民族や時代、宗教によって異なった名で呼ばれていますが、人はその存在と出会い、交わり、一致することにより叡智、力、平安や調和を得ることができると信じ、探求してきました。
また、人は祈るだけではなく、様々な思想、瞑想、療法などを通して、その存在とつながり、一体となる方法を研究し続けています。気功では呼吸を通して身体や精神、心が外界と交流し、宇宙の本質的なエネルギーとつながります。座禅では身・息・心の調和を計ることが、真我に目覚める方法とされます。ヨーガでは、人の中にある精神が「息」という意味でもある真我としてのアートマンと表されますが、これが宇宙根源の力であるブラフマンと同一であると悟ることにより解脱を目指します。
パイプオルガン作品が生まれた土壌であるキリスト教では、三位一体の神の位格の一つである「聖霊」が、息や息吹として象徴されます。混沌の中から世界は神の霊によって創造され、土から形作られた人は、神の息吹を吹き込まれ生きるものとなります。聖霊は永遠のいのちの水が湧き出る泉であり、聖霊の息吹によって神と人、人と人、人と世界は平和と一致へと導かれます。
そして、聖霊は世界を常に新しく刷新し、改革していく力でもあります。
コロナ禍を超えて創造される未来が、私たち一人一人の一瞬ごとの呼吸と息吹、愛の思いと力の中にあることを想い起こすひとときを、このコンサートによって創りたいと考え、「聖霊」をテーマとしました。
人が太古の時代より祈りとして表現をしてきた舞踊と歌と共に、お越し頂くみなさまと一緒に祈りの時を創りたいと思います。
【プログラムについて】
プログラム前半は、聖霊降臨祭で歌われるグレゴリオ聖歌が軸となっています。ミサで歌われる「聖霊の続唱」とバッハが聖霊降臨祭の讃美歌を作品に織り込んだコラール編曲の後には、バッハと同時代にフランスで活躍し、バッハにも大きな影響を与えたグリニーの作品をお聴きいただきます。この作品は、当時の典礼で使われていた、グレゴリオ聖歌とオルガンが交互に演奏する「アルタナーティム」という方法で演奏します。
ドイツバロック、フランスバロックの作品の後に、今ここに生きる私たちの祈りを代弁する作品を、名古屋在住であり、国立音楽大学名誉教授であるトーマス・マイヤー=フィービッヒに委嘱しました。この作品は12世紀に生きた修道女聖ヒルデガルドが創作した聖歌を基とし、倉知可英の舞踊とともに世界初演されます。聖霊へ向かって「全ての賛美の響きよ、生命の喜びよ、光の恩恵を与えるもの」と歌う聖ヒルデガルドの祈りは900年前の姿のまま、ソプラノ独唱によっても歌われます。
プログラム後半では、本年生誕100年を迎えるフランスの天才的なオルガニストであり作曲家であったジャンヌ・デメッシューの作品「聖霊の7つの瞑想曲」、そして宇宙的な次元で神を賛美する「テ・デウム」を取り上げ、舞踊と共に舞台を創ります。
今回の公演ではパイプオルガンというキリスト教の祈りの楽器を通した音楽が中核とはなりますが、一つの宗教という枠を超え、人間の普遍的な祈りと未来の創造に焦点を当てたいと考えています。
吉田文 Aya YOSHIDA パイプオルガン
名古屋生まれ。中学卒業と同時に単身渡独。ドイツ国立ケルン音楽大学カトリック教会音楽科、並びにパイプオルガン科を卒業。ドイツ国家A級オルガニスト資格、ドイツ国家演奏家資格取得。
17歳で由緒あるパーダーボーン大聖堂のオルガン・ツィクルスに抜擢され、メシアンの「主の降誕」全曲を演奏して以来ヨーロッパ各地で活発な演奏活動を続けており、諸国のオルガンコンサート、音楽フェスティバル等に招聘されている。2014年にはベルリン・コンツェルトハウスより招聘を受けリサイタルを行った。
日本では1992年以来名古屋、東京、大阪、京都、札幌の諸コンサートホール等で意欲的なプログラムによるリサイタルを行い高く評価されている他、2006年より活動の拠点を日本に移し、オルガン音楽と教会音楽の普及に力を入れている。オーケストラ、合唱、諸編成アンサンブルのパートナーとして定評を受けている他、現代舞踊など異文化とのコラボレーションにも力を入れている。あいちトリエンナーレ2016では「パイプオルガンとピアノ、歌、朗読、舞踊による夕べ Homo Orans et Harmonia Mundi ~祈る人、そして世界の調和へ~」を企画・開催。
1995年より2006年までケルン南部司牧地区教会音楽家として勤務。典礼音楽の総責任者、またコンサートシリーズの企画・運営、教会音楽フェスティバルの総監督としても活動。独自の企画による2枚組CD「Streiflichter」は多くの現地専門誌で高得点を得るなど、その芸術的価値は多大な注目を浴びた。
2012年にはTh. マイヤー=フィービッヒが補作完成、編曲を行なったJ.S.バッハの作品を集めたCD「Fantasy 1720」をニューヨークのzoho社からリリース。平成27年度名古屋市民芸術祭特別賞受賞。
名古屋女子大学准教授。南山大学非常勤講師。南山大学エクステンションカレッジ、朝日カルチャーセンター講師。「名古屋オルガンの秋」主宰。日本オルガニスト協会会員。
加藤佳代子 Kayoko KATO ソプラノ
名古屋音楽大学、オランダ国立ズボレ音楽院声楽科卒業。同ティルブルグ音楽院古楽アンサンブル科にて学ぶ。ソリストディプロマ、教育者ディプロマ取得。グレゴリオ聖歌から現代音楽まで幅広いレパートリーを持ち、バロックオペラ「オルフェオ」、エールドクール、フランドル楽派の宗教曲などでオランダ国営テレビ、ラジオに出演。リサイタル「小鳥のうた~リュートソング」「ソプラノとチェンバロによるイギリスバロック音楽」「A.ヴィヴァルディ~イタリアバロックの祝祭音楽」を開催。また「イタリアバロック名歌集」シリーズでは古楽器と声楽のアンサンブルコンサートを主催。あいちトリエンナーレ2016バロックオペラ「ポッペアの戴冠」タイトルロール。同公演は名古屋音楽ペンクラブ賞を受賞。モンテヴェルディ「聖母マリアの夕べの祈り」、ペルゴレージ「スタバート・マーテル」他、古楽器との共演多数。2019年には初のソロCD「夕べの賛歌」をリリース。ガット弦のアーチリュートと共に旋律の美しさを極めた歌唱が好評を博し第15回音楽ペンクラブ賞を受賞。2020年COVID-19の影響により演奏会開催が困難な中、日本歌曲コンサートのライブ配信、DVD制作。
愛知日本歌曲研究会、東海バロックプロジェクトに所属。マリウス フォン アルテナ、マックス ファン エグモント、ロードヴァイク メウセン、レベッカ スチュワート、宇田川貞夫、大滝雄志、大野恵子、鎌田直純、神田詩朗、佐藤豊彦、谷鈴代、塚田佳男、牧野正人、渡辺順生、山田千代美の各氏に師事。
倉知可英 Kae KURACHI 舞踊
6歳より、奥田敏子舞踊研究所入所。石井みどり、折田克子、倉知外子に師事。
98年、愛知県新進芸術家海外留学等補助事業の助成を受け、ジャン=クロード・ガロッタ主宰グルノーブル国立振付センター・グループ・エミールデュボワで2年間研修し、その後同カンパニーのメンバーとして在籍し、フランス国内や約20カ国のツアーに参加。06年夏に帰国。
自主企画公演として96年より「倉知可英DANCE YARD」08年よりフランス人ダンサー、ヤニック・ヒューゴンと結成したKAYAKU PROJECTによる様々なジャンルの地元アーティストを集め実験的なパフォーマンス、コラボレーショを主にした「KAYAKU NIGHT」を開催。
2015年より、スタジオを拠点とするスタッフのみのカンパニーを結成し、名古屋を中心に活動する若手舞踊家のための発表の場、実験的表現をする場として定期的に「NAGAOYA DANCE SCENE」を開催。
あいちトリエンナーレ2010,2013での祝祭ウィーク事業で児玉たまみとの共同企画「光の記憶」「光の記憶 第二章」を開催。あいちトリエンナーレ2019舞台芸術公募プログラムでは、「渦の中の女たち」を企画・演出。その他、オペラ公演の振付、出演。音楽家とのコラボレーションなど、ダンサー・振付家として活動する傍ら後進の指導にあたる。
平成24年度名古屋市芸術奨励賞受賞。名古屋市民芸術祭2014特別賞受賞.令和元年度河上鈴子記念現代フェスティバル賞受賞。studio K.K.nagoya主宰
群舞 倉知可英門下生
石原稔子 大西直美 小泉由美 坪内里加子 山本麻代
トーマス・マイヤー=フィービッヒ Thomas Meyer-Fiebig 作曲
ドイツ · ビーレフェルト市に生まれる。ビーレフェルト市マリエン教会の主任牧師を父とし、幼少の頃からパイプオルガンを始めとする教会音楽全般に多大な影響を受けながら育つ。デトモルト国立音楽大学へ作曲専攻にて入学。作曲をヨハネス・ドリースラーとギセルヘル・クレーベに師事。高等教育音楽教員課程および音楽教育課程のドイツ国家試験を取得。大学院作曲課程科を1978年に卒業。
1978年来日以来、国立音楽大学及び大学院にて作曲科の教授として後進の指導にあたる。ドイツ各地の大学にても特別講義講師としてたびたび招聘されている。2015年国立音楽大学退官。国立音楽大学名誉教授の称号を得る。
作品の分野は諸編成の交響曲、室内楽曲、声楽曲から和楽器のアンサンブル曲等にも及び、中でもパイプオルガンのための作品はその創作活動の中で重要な位置を占める。これらの作品は世界各国の多くの演奏家により取り上げられ、ドイツ放送局、西ドイツラジオ、ヘッセン放送局、NHK等の放送局等によっても頻繁に収録、放送されている。又、多くのパイプオルガン曲、並びにピアノ曲を中心とした室内楽作品がドイツのメーゼラー出版社と全音楽譜出版社より出版されている。
作曲家としての活動の傍らオルガニストとしても活発な演奏活動を続けており、1998年にはドイツのエルツ山脈地方ナッサウのジルバーマン製作の歴史的オルガンにてCDを収録した。2019年度名古屋市民芸術祭特別賞受賞。